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【社労士が整理】未払い残業で誤解されやすいポイント10選|固定残業代・申請制の基礎知識

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働き方や労働時間の管理が複雑化する中で、「未払い残業にあたるのか」「固定残業代に含まれるのか」「申請していない残業はどう扱われるのか」といったご相談を、日々多くいただきます。

これらは企業・従業員のどちらにも誤解が生じやすいテーマであり、正確な理解がないまま運用されると、思わぬトラブルにつながることがあります。

そこで本記事では、社労士としての視点から、未払い残業に関して特に誤解されやすいポイントを整理し、固定残業代制度や申請制の基本をわかりやすく解説します。

双方が共通認識を持つことが、適切な労務管理への第一歩です。

未払い残業で誤解されやすいポイント10選(社労士が整理)

① 評価に影響する?と誤解されやすい「申請と残業」の関係

残業申請を行うと「評価に響くのでは」と心配される方は少なくありません。

しかし労基法では、実際に労働した時間に基づいて賃金を支払う義務があり、評価と残業申請は本来切り離して考える必要があります。

企業としても、残業を正確に把握することは業務改善に役立つため、適切な運用が重要です。

② 固定残業代に“自動的に”含まれるという誤解

「固定残業代だから、残業代はすべて込み」という誤解は非常に多く見られます。

固定残業代は“何時間分の残業代”を含むか、就業規則や雇用契約書で明示して初めて成立します。

また、その時間数を超えた場合の残業代は別途支給が必要です。

制度自体は有効ですが、運用ルールの理解が欠かせません。

③ 「自己判断の残業は対象外」という誤解

「指示していないから残業ではない」という声はよく聞かれます。

しかし、仕事量が多く、終業までに終わらないことを会社が認識していれば“黙示の指示”と判断される可能性があります。

従業員側も、必要な業務かどうかを確認しつつ、企業側も業務量の調整を行うことが重要です。

④ 「みなし残業」と「裁量労働制」の混同による誤解

「うちはみなし残業だから」という言い方がされることがありますが、一般的な事務職に“みなし労働時間制”が適用されることはほぼありません。

裁量労働制との混同も多く、制度要件を満たさないまま運用されるとトラブルの原因になります。

制度名称だけで判断せず、内容の理解が不可欠です。

⑤ 繁忙期は仕方ない?と勘違いされがちな残業代の支払い義務

「忙しい時期だから支払えない」という認識は法律上の根拠がありません。

繁忙期であっても、実際に働いた時間に応じた残業代は必ず支払う必要があります。

経営状況によって支払い義務が変動することはなく、企業としては年間の繁閑をふまえた人員配置が求められます。

⑥ 周囲がやっている=正しい、という“慣行”への誤解

「みんな残業代を請求していないから大丈夫」という慣習が存在する職場もあります。

しかし、慣行や文化が法令より優先されることはありません。

おかしいと思ったら会社に確認をして、双方がルールを正しく理解することが重要です。

⑦ 始業前・終業後の作業が労働時間に当たらないという誤解

着替え・開店準備・PC起動などの作業を「準備だから労働時間ではない」と扱うケースがあります。

しかし、業務上必要な行為は労働時間に該当する可能性が高いとされています。

実態を把握し、どこからが労働時間なのかを双方で認識しておくことが大切です。

⑧ 実態より長く(短く)休憩を取った扱いにする誤解

休憩時間は“実際に取れた時間”が基準です。

電話対応・来客対応などがあると休憩とはいえず、自動的に1時間引く運用はトラブルになりやすいポイントです。

企業側は休憩環境を整備し、従業員側も実態を確認しておくことが重要です。

⑨ 「申請がないから残業ではない」という誤解

残業申請がなくても、企業には実労働時間を把握する義務があります。

申請制度は有効ですが、申請が通らない仕組みや実態と乖離した運用はトラブルの原因となります。

企業・従業員双方が「実態に基づく管理」を意識することが適切な労務管理につながります。

⑩ 企業文化や慣習が優先されるという誤解

「うちは昔からこうだから」という理由だけで判断するのは危険です。

労働時間の管理は法令に基づく必要があり、慣習や文化は法的義務を免除するものではありません。

企業としては最新の法令に沿った運用を行い、従業員も制度を理解する姿勢が重要です。

なぜ未払い残業の誤解が起きやすいのか(法律と実務の視点)

未払い残業に関する誤解が生じる背景には、「法律の定め」と「実務の運用」にギャップがあることが挙げられます。

労働基準法は労働時間の原則を明確に示していますが、実際の現場では業務量の変動、部署ごとの慣習、管理職の理解不足などにより、必ずしも正しく共有されているとは限りません。

また、固定残業代制度や申請制など、企業独自の仕組みが加わることで、従業員・企業双方が誤解を生みやすい状況が生まれます。

ここでは「法律の基本」と「実務の注意点」を整理し、誤解の原因となるポイントを明確にしていきます。

・労働時間の基本(労基法32条)

労働基準法32条では、「1日8時間・1週40時間」を超えて労働させる場合には、時間外労働として割増賃金を支払う義務があると定めています。

これは企業規模や業界を問わず、すべての企業に適用されるルールです。

実務では、シフト変更や繁忙による延長業務が発生しやすく、労働時間の把握が曖昧になるケースが見られます。

タイムカードや勤怠システムによる正確な記録、管理者の意識付けが適切な運用の鍵となります。

・時間外割増の基本(37条)

労基法37条では、時間外労働に対して通常賃金の25%以上、深夜労働には25%以上、休日労働には35%以上の割増率を定めています。

この規定は「労働した事実」に基づいて適用され、企業の経営状況やその時期の忙しさによって左右されるものではありません。

現場では「申請が出ていない」「業務上必要だから」という理由で割増計算が軽視されることがありますが、割増分を含めて正確に支払うことが法令順守の基本となります。

残業や割増賃金について詳細を知りたい方は「残業ルールのキホン 知っておくべきポイント」を参考にしてください。

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・黙示の指示の概念

企業が明示的に残業を命じていなくても、業務量や締め切り、担当範囲などの状況から「実質的に会社が残業を必要としている」場合があります。

これを“黙示の指示”と呼びます。

実務では「指示していないから残業ではない」と誤解されることがありますが、業務遂行上必要とされる残業は賃金支払いの対象となります

企業は業務量の調整を、従業員は自己判断で抱え込みすぎない工夫が求められます。

・固定残業代制度。正しく運用すべきポイント

固定残業代制度は、一定時間分の残業代を基本給とは別にあらかじめ支給する仕組みです。

ただし、その運用には以下の要件が必要です。

  • 何時間分の残業代かを明確にする
  • 基本給と固定残業代を分けて表示する
  • 時間数を超えた場合は追加支給する

これらが満たされていないと、制度自体が無効となる可能性があります。

固定残業代は有効な制度ですが、理解不足から“すべて込み”と捉えられがちなため、誤解が生じやすい分野です。

・申請制度の限界(把握義務との関係)

企業が残業申請制度を設けること自体は問題ありませんが、労働時間の“把握義務”を免除するものではありません。

従業員が申請していない場合でも、実際に労働した時間が把握できる状態であれば、賃金支払いの対象になります。

逆に、申請しても承認されない仕組みや、業務量と制度が合っていない場合、未払い残業のリスクが高まります。

運用と実態を一致させることが実務上の課題です。

未払い残業かもしれない時に確認すべきポイント(チェックリスト)

未払い残業のトラブルは、当事者が「何が問題なのか」を正確に把握できていないことが原因となる場合があります。

企業側の運用と従業員側の認識に差が生じ、結果として労働時間のカウントがずれてしまうことも少なくありません。

そこで、実務上特に確認しておきたい10項目をチェックリスト形式で整理しました。

双方が同じ基準で確認することで、誤解の防止や適切な労務管理につながります。

① タイムカードと実際の勤務時間に差がないか

タイムカードや勤怠システムと、実際に働いていた時間に差がある場合、確認が必要です。

たとえば「早出してPC起動作業をしていた」「閉店後の片付けをしていた」など、実態と記録がずれるケースがあります。

記録と実態をすり合わせることが第一歩です。

② 申請した残業と実際の残業が一致しているか

申請制を導入している企業では、「申請時間」と「実際の労働時間」が一致しているかを確認します。

申請が通らない仕組みになっていたり、実態に合わない承認フローは、後の齟齬(そご)につながることがあります。

③ 業務量が所定時間内に収まる前提になっているか

業務量が常に所定時間内に終わらない状態が続く場合、黙示の指示と判断される可能性があります。

企業側は業務量の見直し、従業員側は「終わらない理由」を共有することが重要です。

④ 休憩時間が実態どおりに取れているか

記録上は1時間休憩となっていても、実際は電話対応や来客対応が続き、休憩が取れていないケースがあります。

休憩時間は“実際に取れた時間”が基準になるため、実態との比較が必要です。

⑤ 始業前・終業後の作業が労働時間として扱われているか

準備作業や片付けが必要な業種では、始業前・終業後の作業が発生します。

これらが労働時間に含まれるかどうかの認識がずれていると誤解につながるため、双方でルールの確認が必要です。

⑥ 固定残業代の「時間数」や「運用方法」を理解しているか

固定残業代制度は便利な制度ですが、運用に誤解が生じやすい分野です。

何時間分の残業を含むのか、明細で区分されているか、超過分が支払われているかなど、基本を確認することでトラブルを防げます。

⑦ 社内規程(就業規則)と現場運用が一致しているか

就業規則で定めた労働時間や休憩の取り方が、実際の現場運用と異なるケースは珍しくありません。

規程と実務のズレは誤解の原因になりやすいため、双方で確認することが重要です。

⑧ シフト管理や業務指示が口頭だけになっていないか

業務指示やシフト変更が口頭のみだと、「指示した・していない」の食い違いが起きやすくなります。

簡単なメモ・チャット履歴でも構わないため、記録として残しておくと誤解防止に役立ちます。

⑨ 勤怠修正が本人の知らないうちに行われていないか

管理者が勤怠データを修正する運用はあり得ますが、本人への通知がないまま行われるとトラブルの原因になります。

修正が必要な場合は、理由と内容を双方が確認できる仕組みが重要です。

⑩ 業界特有の慣習が法令より優先されていないか

「昔からこうしている」「この業界では当たり前」という理由で、実務が法令から逸脱するケースがあります。

慣習は法令を上書きしないため、業界特性と法令のバランスを見ながら運用することがポイントです。

残業未払い以外にも気になることがある場合は「【2025年度版】ブラック企業の特徴8選|偏差値80~50まで」を参考にしてみてください。

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トラブル防止のために企業と従業員ができること(社労士の視点)

未払い残業の誤解は、どちらか一方の問題というより、企業側の運用や従業員側の認識がすれ違うことで生じるケースが多く見られます。

双方が「正しい情報共有」と「実態把握」に努めることで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。

ここでは、社労士としての実務経験から、企業と従業員がそれぞれ取り組めるポイントを整理します。

企業側が取り組めること

企業が未払い残業を防止するためには、制度の整備だけではなく「運用の透明性」が重要になります。

① 労働時間を正確に記録する仕組みを整える

勤怠システムやタイムカードの活用はもちろん、実態と記録が乖離しないよう、管理者への周知も欠かせません。

「自己申告制のみ」の運用は誤解を生みやすいため、一定の客観的管理が必要です。

② 業務量の見直しと適切な配置

慢性的に残業が発生する部署では、業務量の再配分や人員の検討が必要です。

「終わらないから残業」で片付けず、原因を把握することが未払い残業の予防につながります。

③ 残業申請・承認のフローを明確にする

申請しても承認されない、または現場ルールが曖昧という状態はトラブルの元です。

誰が承認し、どの基準で判断するのかを明確化し、従業員が理解できるようにしておくことが大切です。

④ 固定残業代制度の正しい運用

制度が有効であっても、明細の書き方や超過分の扱いによって無効と判断される可能性があります。

制度の趣旨・ルールを管理者まで徹底し、誤解を招かない運用が求められます。

⑤ 定期的な研修・コミュニケーション

労働時間管理は、法改正や判例の影響も受ける領域です。

年に一度の研修や管理者向けの説明会などを通じて、最新の情報を共有することが効果的です。

従業員側が取り組めること

従業員自身も、自分の働き方や制度の理解を深めることでトラブルを防ぐことができます。

① 自身の労働時間を把握する

タイムカード、勤怠アプリ、メモなどを活用し、自分が実際に働いた時間を把握することが重要です。

何にどれくらい時間がかかっているかを把握すると、業務改善にもつながります。

② 終わらない業務は早めに共有する

「業務量が多く終わらない」ときは、自己判断で残業を続けるのではなく、上司に早めに共有することが大切です。

黙示の指示になる前に調整してもらえる可能性があります。

③ 休憩が取れない状況は記録する

忙しくて休憩が実質的に取れない場合、時間と状況をメモしておくと、企業側とのすり合わせがスムーズになります。

④ 勤怠修正があった場合は内容を確認する

会社側で勤怠修正があった場合、理由や相違点を確認することが大切です。

誤解を防ぎ、後からのトラブルを避けることにつながります。

⑤ 労働時間制度のルールを理解する

固定残業代制度、申請制、みなし労働時間制など、基本的な労働時間制度を理解することも重要です。

制度の誤解が減れば、企業とのコミュニケーションもスムーズになります。

サービス残業が常態化していて原因と対策を知りたい方は「サービス残業が当たり前の職場を見極めるコツ|原因と対策を徹底解説」を参考にしてください。

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まとめ:未払い残業の“誤解”をなくすことが労務管理の第一歩

未払い残業に関するトラブルは、決して一方が悪いという単純な話ではなく、「法律の仕組み」と「現場での運用」にずれが生じることで起こるケースが大半です。

固定残業代や申請制度など、企業ごとの仕組みが加わることで誤解が生じやすい領域でもあり、双方が正しい知識を持つことが重要になります。

本記事で整理したように、未払い残業に関する誤解は、労働時間の定義、休憩の取り扱い、業務量の問題、勤怠管理の方法など、さまざまな場面で生まれます。

まずは「どこに誤解があるのか」を知り、記録や制度の運用を見直すことで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。

労働時間管理は、企業の労務リスクを避けるうえでも、従業員が安心して働ける環境づくりのうえでも欠かせないテーマです。

企業と従業員が共通の理解を持ち、適切にコミュニケーションを取りながら制度を運用することが、良好な労使関係の基盤となります。

双方の協力によって、働きやすい職場づくりにつながることを願っています。

最後に:労働環境に不安がある場合の「もう1つの選択肢」

未払い残業が続く職場では、制度や運用を見直すことで改善できるケースがあります。
一方で、働く環境そのものが改善されない場合は、他社の労働環境を比較してみることも選択肢の一つです。

比較するだけで「自分の市場価値」「他社の残業管理の厳しさ」などがわかり、転職する・しないに関わらず視野が広がります。

👉 【社労士が厳選】ブラック企業を避けたい人におすすめの転職サイト5選

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👤 監修者プロフィール

社会保険労務士 三島潤

社会保険労務士 三島 潤
三島社会保険労務士事務所 代表

  • 顧問先100社以上の労務管理をサポートし、年間数百件の労務相談に対応
  • ブラック企業の実態に精通し、安心して働ける環境づくりに尽力
  • 「ブラック企業を減らし、幸せな職場を増やすこと」を使命に、企業経営者・働く人の双方を支援中

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